体のどこかに傷

 ・頭部・頸部の傷
 頭部の外傷は多くの場合、傷口が小さくても出血がいちじるしく、目、耳、鼻などの重要な器官と脳があるのですから、十分に注意し、慎重な取り扱いをしなければなりません。あわてて軽率なことをしますと取り返しがつかない事があります。
 鼻出血や耳からの出血があるときには、頭蓋骨の骨折の疑いもあるので、一刻も早く安静を保ちながら病院へ連れていくべきです。
 頭部の外傷の場合には、たとえ傷が軽く見えても獣医師の診断が必要です。
 頸部には、大きな血管、神経、食道、気管などがあるので、ここも重要なところです。十分な注意が必要です。安静にして大急ぎで獣医師に見せるようにしてください。


 ・胸部の傷
 胸部には肺や心臓があります。強打すると、肋骨の骨折片がそれらに刺さって喀血をおこしたり、呼吸困難に陥ったりする恐れがあります。また、胸部の深い傷では、胸腔に空気が入って気胸になり肺が圧迫されて、呼吸困難となります。とくに肺までとどくような傷がある時は、傷を完全に閉じることが必要です。そして必要があれば、人工呼吸をおこないます。
 傷を完全に閉じるのは獣医師の仕事ですが、応急手当としては、荷造り専用の幅の広いガムテープで巻くか、ビニール袋などを当てて周囲をセロハンテープやビニールテープで皮膚に密着させるようにします。こうしてから、大急ぎで獣医師のところに運びます。

・腹部の傷
 腹部には、胃、腸管、肝臓、脾臓などがあります。外傷では、腸の損傷がもっとも多くみられます。
 腸が損傷すると、激しい痛みをともない、貧血ショックをおこします。
 一般に腹部の傷はショック症状をおこすことが多いので気をつけてください。よく観察し、たとえ内臓の一部が外へ飛び出しても、汚れた手で押し込んだりせず、清潔な布などを上からかぶせておきます。そして、出来るだけ早く獣医師のところへ運ぶことが必要です。