犬と猫の臨床検査


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血液検査          (基準値より高い場合  基準値より低い場合)
検査項目 単位 基準参考値 疑われる問題点
WBC体内に細菌やウイルス、異物などが侵入したとき、これを取り込んで破壊したり(食作用)、免疫抗体を作って細菌やウイルス、がん細胞を殺したりする(免疫反応)働きをしています。
炎症が起きると骨髄でさかんに作られ、病原菌の侵入を防ぎます。
よって、白血球の数が多ければ、体内のどこかで炎症が起きたり、病原菌が進入していることを示します。
白血球数 /uL 6000〜17000 5000〜15000 感染、中毒、組織壊死、各部炎症など
骨髄の異常、パルボなどのウイルス感染など
 ├LY(リンパ球) 1000〜4800 1400〜8100 リンパ性白血病
ストレス、ウイルス感染
 ├MO(単球) 100〜1300 0〜800 慢性炎症、溶血性疾患
 ├EO(好酸球) 100〜1200 0〜1500 アレルギー疾患
ストレス
 └GR(顆粒球) 3000〜11800 2500〜11300 ストレス、炎症
消費亢進、ウイルス感染
RBC骨髄で産生され、ヘモグロビンを通じて酸素を体の隅々まで運び、不要になった二酸化炭素を運び出す働きや、血液のpHを一定に保つなどの重要な働きをしています。 赤血球数 104/uL 550〜850 600〜1020 脱水、興奮などによる血液濃縮、多血症など
貧血、出血、腎臓病
HGB赤血球中のヘモグロビンは、酸素を体中の組織に運び、かわりに二酸化炭素を受け取って肺まで運んで放出し、再び酸素と結びついて各組織に運ぶという大変重要な働きをしています。 ヘモグロビン量 g/dl 12〜18 9〜15.1 脱水、興奮などになる血液濃縮など
貧血、ビタミン不足、造血機能低下など
HCT遠心機に回すことによって、血液は固体(細胞)成分である血球と液体成分である血しょうに分かれますが、一定量の血液の中にどのくらいの血球成分があるのかを容積比で表したものがヘマトクリット値(血球容積)です。
正常な時は、血球と血しょうの容積比はほぼ一定になります。
血球容積 % 37〜55 30〜45 脱水、興奮などによる血液濃縮、多血症など
貧血、出血、造血機能低下など
MCV赤血球数、ヘモグロビン濃度、血球容積の数値から各種の赤血球指数を計算すると、貧血のおおまかな分類ができ、原因の推測や治療方針の決定に役立ちます。 平均赤血球容積 fL 60〜77 41.5〜52.5 出血、溶血、タマネギ中毒など
鉄欠乏(ノミダニなどの吸血)、慢性出血など
Plat血小板の中心的役割は止血です。血管が損傷する(破れる)と血管壁にくっつき(粘着)、活性化することでお互いがくっつき(凝集)、大きな塊を作って出血を止めます。
よって血小板数が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなります。
血小板数 104/uL 20〜50 20〜60 免疫疾患、急性出血、慢性感染など
骨髄疾患、免疫疾患、激しい出血、バベシア症など
TP血しょう中には100種類以上のタンパク成分が存在し、細胞外液を介して体の至る所に分布しており、こう質浸透圧の維持や生体の防御機構などに関与しています。その主なものはアルブミン、免疫グロブリン、リポ蛋白、糖蛋白、補体、凝固因子などになります。 総タンパク質 g/dl
/μl
6〜8 6〜8 感染、脱水、肝障害、高タンパク血症、腫瘍など
栄養障害、肝障害、腎障害、タンパク喪失性腸症など
フィラリア子虫検査採血した血液を直接顕微鏡で観察し、ミクロフィラリアを見つけます。このミクロフィラリアの出現には周期性(日中は体表の血管には出てこなく、夜間に移動する)があるためミクロフィラリア陰性でも感染を否定はできません。 -  +  ++ フィラリア抗体検査フィラリアのメスが出す分泌物を抗原とし、それを検出する検査。さまざまな検査キットが出ています。 -  +  ++
FeLVレトロウイルス科の腫瘍ウイルスが原因です。他のレトロウイルス科のウイルスと同様に長い潜伏期間を経てストレスなどがきっかけとなって発症をみることが多いです。
感染猫の唾液中には多くのウイルスが含まれており、食器の共有や、グルーミング、咬傷などを介して感染すると考えられています。
猫白血病ウイルス -  + FIVレトロウイルス科のレンチウイルス亜科:猫免疫不全ウイルスの感染症です。別名:猫エイズ。
主に咬傷により感染するといわれています。感染後約2週間で抗体は検出されます。このウイルスはひとたび感染すると、猫の体内から消えることはまずありません。
猫免疫不全ウイルス -  +

血液化学検査
検査項目 単位 基準参考値 疑われる問題点
Glu血糖値は食事による摂取のほか肝臓で産生放出されるブドウ糖と、脳・筋肉・赤血球などの末梢組織での消費との間で動的な平衡状態を保っています。特に中枢神経系ではグルコースは唯一のエネルギー源になります。 血糖値 mg/dl 50〜124 糖尿病、ストレス、クッシングなど
肝不全、低血糖、腫瘍など
T-cho血中のコレステロールは、食物からの供給は3割に満たず、大半は体内での生合成で供給されます。主に合成される臓器は肝臓になります。 総コレステロール mg/dl 70〜303 糖尿病、クッシング、甲状腺機能低下など
肝疾患など
BUN血液中に含まれる尿素量をあらわします。タンパク分解産物であるアンモニアが、そのままでは神経毒性を有するため、肝臓で尿素サイクルの代謝をうけて尿素が産生される。
尿素のほとんどは腎臓でろ過されて尿中に排泄されますが、その一部は再吸収され血中に戻されます。
尿素窒素 mg/dl 4.8〜31.4 腎不全、尿毒症、尿路閉鎖、消化管出血など
肝障害、タンパク質不足など
T-Bilヘモグロビンやポルフィリン体の分解産物。 総ビリルビン mg/dl 0〜0.5 胆管肝炎、胆管閉塞、溶血
GOTGOTは肝臓、心筋、骨格筋に多く含まれている酵素なので、それらの臓器や組織が障害(破壊)された場合、血液中のGOTの値が異常に上昇してきます。
臓器や組織の種類、障害の程度によってGOTの上昇度に差があり、障害の程度が強いほど数値が高くなります。
(AST) lU/l 9〜69 肝機能障害、筋肉壊死など
肝不全など
GPTGPTは肝細胞に多く含まれている酵素なので、肝細胞が障害(破壊)された場合、血液中のGPTの値が異常に上昇してきます。 (ALT) lU/l 13〜53 肝機能障害、低酸素症など
肝不全など
Creクレアチニンは血中非タンパク性窒素化合物の一つであり、主に筋肉内でクレアチンから非酵素的脱水反応により産生される最終代謝産物です。クレアチニンは生物学的活性を持たず尿中のみに排泄され、腎機能の低下とともに血中で上昇するため、腎機能の指標に用いられています。 クレアチニン mg/dl 0.2〜1.6 腎不全、尿毒症、尿路閉鎖、腎機能障害など
ALP生体の細胞膜に広く分布し、アルカリ側のpHでさまざまなリン酸化合物を分解する酵素です。 アルカリフォスターゼ U/l 14〜142 肝機能障害、胆汁うっ滞、ステロイド、クッシング、腫瘍など
GGTペプチドのN末端のグルタミン酸を他のペプチドまたはアミノ酸に転移する酵素であり、グルタチオンなどの生成に関与している酵素です。 (γ-GTP) lU/l 0〜15 肝機能障害、胆管閉鎖、胆管系の疾病など
Na電解質成分のひとつで、からだの水分の保持や浸透圧の調節(酸・塩基平衡)などの働きをしています。 ナトリウム mmol/dl 137〜150 高体温、糖尿病など
ネフローゼ、心不全、アジソンなど
K神経の興奮や心筋(心臓の筋肉)の働きを助ける、生命活動の維持調節に重要な電解質のひとつです。 カリウム mmol/dl 3.4〜5.2 溶血、アジソン、高血糖など
嘔吐、下痢、腎不全など
Cl電解質成分のひとつで、他の電解質との相互関係のもとに水分平衡、浸透圧の調節などに重要な役割を果たしています。 クロール mmol/dl 102〜117 脱水など
高脂血症、嘔吐、アジソンなど
CPK筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしています。 クレアチニンキナーゼ lU/l 10〜199 打撲、組織内出血、筋障害、神経異常など
Caカルシウムは、骨や歯の形成、神経刺激の伝達、血液の凝固などのはたらきをしています。
体内のカルシウムの99%は骨や歯に蓄えられていて、その残りが細胞内や血液中に存在します。
カルシウム mg/dl 6.2〜11.3 リンパ腫、腎不全、アジソン病など
急性膵炎、低Alb
IP(PHOS)カルシウムと共に骨形成に関与し、糖代謝、エネルギー代謝に必須の物質です。 無機リン mg/dl 2.9〜8.5 腎不全、副甲状腺機能低下症、二次性上皮小体機能亢進症
栄養不足、くる病、一次性上皮小体機能亢進症
ALB血しょうタンパク質の中では量的に最も多い物質であり、血清タンパク質の50〜65%を占め肝臓で生成されています。 アルブミン g/dl 2.2〜2.4 脱水
飢餓、寄生虫感染、栄養消化、吸収不良など
GLOB血しょうタンパク成分です。 グロブリン g/dl 2.6〜5.1 感染症、肝炎、腫瘍
初乳摂取不良、免疫不全
AMY主に膵臓や唾液腺より分泌される消化酵素。 アミラーゼ U/l 500〜1500 膵臓疾患、腸閉塞など
LIP脂肪を分解する消化酵素で、すい臓由来の糖タンパク。 リパーゼ U 100〜1500 膵臓疾患、外傷など
NH3主として腸管内で、食事タンパクなどから生成される分解産物で毒性を持ちます。
このため主として肝臓において尿素サイクルにより毒性の低い尿素に変換され、腎臓から排泄されます。
アンモニア μg/dl 犬:30〜80 猫:11〜158 肝機能低下、門脈シャント
CRP炎症、組織破壊が起こると24時間以内に非特異的に血中増加するタンパク。 mg/dl 0〜1 炎症があると上昇

特殊検査
検査項目 基準参考値 検査項目 正常値
T4甲状腺で合成されるホルモンで、生体の基礎代謝を高める機能を持ちます。 0.6〜2.9μg/dl PRO たんぱく質尿のタンパク質。腎臓に異常があったり、膀胱炎などがあると尿中のタンパク質が多くなります。 negative
FT4甲状腺で合成されるホルモンで、生体の基礎代謝を高める機能を持ちます。 1.87〜8.4pmol/l PH 尿の酸性度尿検査の一種。一般には「酸性」ですが、過剰になると「アルカリ性」になり、細菌感染、ストラバイト結晶などが疑われます。 5.0〜7.0
コルチゾールpreACTH(副腎皮質刺激ホルモン)により調節され、主に副腎皮質束状層から分泌される糖質コルチコイド。
過剰でクッシング症候群、不足でアジソン病を起こします。
0.6〜5.0μg/dl S.G 比重尿検査の一種。数値が低いと尿の色が濃く尿中に含まれる老廃物が多くなります。数値が高い場合は尿の色は薄い状態になります。 1.015〜1.060
ACTH post    h視床下部の刺激で分泌され、副腎皮質のステロイド合成を促す下垂体前葉ホルモン。
不安、緊張などで分泌が高まるほか、下垂体腺腫によるクッシング病や副腎機能不全で上昇します。
BLD 潜血尿検査の一種。尿中に血液が含まれている場合、泌尿器系出血または赤血球破壊など。 negative