嘔吐 - 嘔吐物

 ・草を食べて吐く
庭のなかや散歩の途中で猫や犬が草の葉を食べて、しばらくするとそれを吐きだすのです。えさに野菜が不足しているのではないかと思う飼い主もありますが、これはちょっと意味が違います。多くの場合、草と一緒に胃液や粘液を吐きだします。白い泡と無色の液体がそれです。
これは胃炎や胃酸過多症の症状で、人でいう「むねやけ」と同じです。吐いた液のなかに比較的鮮やかな血液が少量混ざる時はとがった草で胃粘膜が傷ついて出血したものと思われますが、茶色くなった血液が比較的多量に混入したときは、胃出血が疑わしく、胃潰瘍の可能性もでてきます。犬では胃潰瘍の発生はごくまれであるといわれています。一般的には胃内異物によっておきた炎症部位からの出血が一番多いようです。
 ・血が混じっている
胃の中に長くあった血液は胃酸の影響を受けて茶褐色に変化します。ですから、嘔吐物に混じって出る血液は一般に茶褐色をしています。このため、血液だとは気づかずに、重大な病気を見逃してしまう飼い主も少なくないでしょう。
胃の中でおこる胃出血は、いろいろな原因によるものですが、症状として必ず嘔吐をともなうとはかぎりませんが、ふつうは胃潰瘍、胃粘膜の糜爛(ただれ)、胃内異物による損傷などによる出血があります。
胃潰瘍や異物による外傷で多量の出血があると、血液が胃液の影響を受けないうちに嘔吐することもあるので、吐物のなかに鮮やかな血液が混ざることもあります。
また嘔吐の途中で胃や食道の粘膜を傷つけておこった出血が、吐物の表面に転々と付着していることもあります。さらに口腔のなかで血が混ざることもあります。
このように種々の原因が考えられますから、獣医師は吐物のなかに含まれた血液の色と量と形(固まっているかどうか)などを手掛かりとして診断をしなければなりません。また、嘔吐をおこした前後の様子も大事な手掛かりです。
いずれにしても、原因の心当たりや様子を、できるだけ臭しく伝えるようにして、早く手当てを受けないと、大事に至ることがあります。
 ・石や木片が混じっている
嘔吐物のなかに、もし石ころや木片などえさとして与えた食物以外の異物が混じっていたら、これはいくつかの問題があります。
えさにもならない石や木片が出てきたことは、これらを間違って飲み込んでしまったのか、それとも無機塩類の代謝病があって本能的に砂や泥や石などを食べたのかもしれないという問題です。
このようにえさにならない異物を食べたがる状態を「異嗜(いし)」と呼び、主として無機塩類の不足、代謝障害のほか、寄生虫病などにあらわれることがあります。
次に問題になるのは嘔吐によって、のみくだした異物が全部出てきたかどうかということです。消化管のなかに、もし残っている異物があったとすると、その量や大きさ、形などを調べなければなりません。ことによると二次的な消化管の障害のもとになるかもしれないからです。
このためにはレントゲン写真や胃の内視鏡など専門的な診断がぜひ必要です。
 ・吐いた物の中に虫がいた
吐物として寄生虫がでてくるのは、ほとんど回虫です。子犬や子猫によく見かけられます。回虫は胎生中にすでに感染する機会があり、生後月日の浅い幼獣に寄生している例がたくさんあります。虫を吐いたら、これでからだの寄生虫が全部出てきたわけではありません。さっそく虫卵検査をしてもらい、残りの虫や、ほかの寄生虫がいるかどうかも調べてもらいましょう。

 ・白い泡や黄色い水を吐く
嘔吐をするのを見たら、きたながらずに吐いた物をよくみてください。えさとして与えたものは別にして、白い泡が含まれていたら胃液か粘液です。この場合、胃炎、、胃酸過多症などが考えられます。
白い泡に黄色い液が混じっていたら、本来十二指腸に分泌される胆汁が胃の幽門を逆流して胃に流れこんできた証拠で、胃炎や胃酸過多症がかなり重たい場合にみられます。
また胆汁の量が多い場合には十二指腸より先の小腸に腸管の狭窄や閉塞がおきていたり、膵炎や胆管炎も疑われます。