糞便 - 糞の中に何かが混じっている

 ・排便の中に「虫」がいる
動物に寄生虫は「つきもの」と思っている人が多いようです。事実、過程で飼われているペットにみられる寄生虫病はかなり多い発生率を占めています。
犬や猫で、排泄された糞便と共に消化管内の寄生虫が排泄されることがあります。比較的わかりやすいのは回虫と条虫で、とくに条虫は便の表面を片節がはい回っていることがあります。しかし、もともと空気中では生きていられないので、じきに乾いて死んでしまい白ゴマのようになり、分かりにくくなります。時には条虫の片節だけが肛門からはい出して、そのあたりに付着しているのを見かけます。排泄された糞便を新しいうちによく観察して下さい。
糞便に虫が出たということは、その寄生虫が消化管のなかに寄生していた証拠ですが、全部出てしまったわけではないのです。まだ残っている可能性が高いので、寄生虫の種類が分からないときは、便と一緒に虫も獣医師に見せて判定してもらったうえで、駆虫剤の投与についても相談するとよいでしょう。
ついでですが、定期的な検便をおこない、駆虫をすることは動物のために大変重要な健康管理の一つです。

 ・糞便に血液が混入している
便の色のところで血液のことにふれましたが、もう一度まとめてみましょう。
腸管内の出血は便の量によっても違いはありますが、ふつう、色とその混じりかたで出血の部位と軽重がある程度わかります。つまり、[1]赤い色が濃いほど出血量が多い[2]赤い便と黒い便とでは、赤いほうが大腸、黒いほうは小腸の上部(十二指腸や空腸)や胃の出血の場合が考えられ、黒が濃いほど胃に近い、[3]血液が便のまわりに付着しているときは大腸の出血と考えられます。このような症状から胃や腸で出血があるとき、便と一緒にでてきた血液による出血部位の見分けかたの目安です。
出血量が多いほど、便に混じる赤い色が多くなるので、便は赤みが強くなります。胃や腸から分泌される消化液によって血液の赤い色は黒く変わります。

食べ物(糞)が腸を肛門に向かって流れ落ちるとき、小腸では全体がよく混じりながら通るので、出血によって混じった血液も全体によく混じってしまいます。大腸までくると、もう混じらず腸の壁から水分を吸収しながら下がってくるので、大腸からの出血は便の周囲に付着するだけになります。
もし排便のときに肛門で出血があると、糞便の周囲に付着する血液は肛門の外にでてから凝固するので、便とは別に血液が流れたように見えます。
食事に、肉が多いか植物性の繊維が多いか、またその色によって多少のちがいがありますが、ここにあげた原則を知っていて排便の状態をよく観察すると病気の発見が早くなります。
下痢ばかりが便の異常ではありませんから、普段与えた食事でどんな便が出るのかをよく知っておくと、健康管理の上からもたいへん役立つことになります。あしたからでも、ぜひ実行してみて下さい。

 ・糞便に粘液(寒天状のもの)が混じる
排便のなかにべろべろした寒天の塊のようなものが混じっていたら、それは粘液の場合が多いようです。
腸粘膜から分泌される粘液は腸炎の証拠で、とくにこれが便とともに排泄されたときは盲腸以下の大腸や直腸に炎症があると考えられます。粘液と同時に血液もあるかどうかをよくみてください。
また、木片や石や砂など、えさにならないものを飲んでしまい、炎症の原因にもなることもありますから、できれば棒きれや箸などで、便を分けてみるとよいでしょう。どうしても出来ない飼い主は、その便をできるだけそっくり全部を獣医師にみてもらうことです。

 ・糞便の中に不消化物や石や木片がでる
えさとして与えたものでも、その動物が消化できないものはたくさんあります。もともと肉食動物の犬や猫に近頃では野菜や果物を与える機会が多くなりましたが、これらの植物性の繊維は種類によっては、必ずしも消化されるとは限りません。
このような、本来消化できないものが糞便の中に、与えた時と同じような形のままで排泄された時は、さほど心配する必要はありませんが、ただこれら不消化物の大きな塊は、不必要に腸の粘膜を刺激して、腸の運動を早めてしまい、本来消化できるはずの栄養物までも吸収されないうちに押し出してしまう恐れがあります。
また不消化物が出るのは、消化器系の消化力の弱さをしめすこともあります。便の中に不消化物が多く含まれる時は、消化管の運動が多すぎるか、あるいはその動物の消化力が衰えているか、つまり消化液を分泌する各器官の病気があるのかもしれません。歯の病気、口内炎、唾液腺の病気、胃の病気、膵臓の病気、肝臓病、などを考えてみなければなりません。
また石や木片が混じっている場合には、無機物代謝の病気、骨の病気までも想像しなければなりませんし、飼育管理の方法も、一度見直す必要がありそうです。